待ち合わせは5時。

あと一時間はある。

私は胸の高鳴りを紛らわすべく、愛弓が迎えにくるまでの時間を
観月ちゃんと過ごすことにした。


――男の子達はおいかけっこしてるから、誘われても浴衣だからできないしね。



バニラアイスをもぐもぐ頬張る観月ちゃんの隣に座る。


「わぁ、お姉ちゃんキレイ」


ぱぁっと花が咲いたように笑みを浮かべ、観月ちゃんは誉めてくれた。


「ありがとう♪」


「いいなぁ…観月もマサくんと行きたい…」


しゅん…と小さくなる観月を可愛く思った。


「マサくんね?
お母さんと行くんだって」

「…観月ちゃんもおばさんと行けば、
会えるかも知れないじゃない」

そう返すと、
観月ちゃんはアイスを食べるのを止め、少しだけ俯いたあと、
私を見上げて首を左右に振る。


「…だって
マサくんに“この人が観月ちゃんのママ?”
って聞かれたら
観月、何も言えない。
おばさんだよ何てゆったら、
マサくんに何でって聞かれちゃうよ、

…観月、そんなのやだもん。そんなふうな顔でマサくんに見られるのこわいもん…」



私は観月ちゃんの寂しげな瞳を見て、
申し訳ない事を言ってしまったと胸が傷んだ。



観月ちゃんは二歳くらいの時
まだ無知な上抵抗も何も出来ないまま親に連れて来られて、この施設に
置いてかれた。


その頃もう私は施設で生活していて、
その一部始終も見てしまっていた。


野性の勘、とでも言うのだろうか。

観月ちゃんはもう親がここに来ることはないのだろうと気付き、
寂しさが溢れたのか
1人で泣いていた。


「大丈夫だよ」


私が思わず観月ちゃんの頭を撫でてそう言った事を覚えている。