夏休みが来て、
私と愛弓は彼氏、彼女の立場になっただけで、

取り立てて何の進展もないまま、だらだらと過ごしていた。


「あつーい」

パタパタと団扇を扇ぎながらだるそうに歩く愛弓の隣で、私は少し不貞腐れていた。


夏休みに入っても、
何処にも行ったことがないのだ。


愛弓の家でゲームして遊んだり、
取り敢えずお勉強したり。


今だって私が「せめて図書館とか位行こうよ」と、ちょっと我が儘言って
一緒に歩いているのだ。

「んで、図書館で何すんの?」

少し私の身長に合わせて
屈んで尋ねる愛弓にドキンとする。


「ほ…本読むっ」


胸の鼓動に気付かれたくなくて、わざと力強く言うと


「香住面白いわ。
香住が本読むなんて珍しい。雨でも降るんじゃね?」


と笑いながら私を見る。


「だって、
プール行こうって言ってもヤだって言うじゃん」


この間、
そんなに暑い言うならプール行こうよ
と言ったら

何故か不機嫌そうに
ヤだ。
と却下されてしまったのだ。