「精霊といっても、実体化できない下位の子達なんだけれど。もっと上位の精霊達は、人の形を真似ることも出来るわ」
「・・・吸血鬼だけじゃなくて、他にもいろんな生き物がいるんだね」
母は微笑んで、
「そうね。精霊や妖精、狼人間や竜だって、この世にきちんと存在しているのよ」
映画や小説の中でしか語られないファンタジーの世界の住人達。それが、本当にこの世界に実在していると思うと、どこか素敵だと思えた。
「お母さんは会ったことがあるの?」
「残念ながら、そう頻繁に会うことはないわ。皆隠れて生きているから。それでも、匂いでわかるわ」
「そっか。でも、私はレアさんやリキを見ても、何も感じなかったよ」
言ってから、ふと気づく。そういえば、何も感じなかったわけじゃない。初めて会ったとき、背中を何かが走りぬけたみたいな感覚に陥ったんだった。
そんな私の様子に気づいたのか、母はそっと私の髪をなでた。
「カノンだって、きっと何かを感じているわ。ただ、気づかなかっただけよ」
「そう、かな」
「きっとそうよ。貴女は私の娘だもの」
母は、そっと息を吐いて、感慨深げに、
「今までは、私の娘だと胸をはって言うのが怖かった。だけど、今なら言える。本当に、貴女が私の娘でよかった」
そう、告げた。

