私が小さな子供の頃、随分大きな身体だと感じていた母なのに、今では私と同じ大きさで、だからか随分小さくなったように感じた。
いつまでも、守られてばかりの子供じゃいられない。
母の言葉は、私の心を深く捕らえていたけど、それでも私は立ち向かおうと思う。
本当の自分を隠して生きていた世界。人間ではない生き物を認めない世界。だけどそれが私が生きる世界。
ありのままの自分を生きることに、胸を張っていればいい。
普通だとか普通じゃないとか、そんなことは些細なことで、こだわり続けていた私が間違っていたんだ。
自分自身から目を背けていた私が、自分自身を否定していた私が、偽りのない自然の最高の一瞬など、撮れるはずがなかったんだ。
私は、そっとウィッグを外した。
あらわになるのは、ヴァンパイアである母と同じ色の髪の毛。
「お母さん、私ね」
私の脳裏に浮かぶのは、この髪を綺麗だと言ってくれた銀色の髪の吸血鬼。
「リキのことが気になって仕方ないの」
母は、関わるなと言った。理由は今ならわかる。リキも、母と同じヴァンパイアだったからだ。
私がリキに近づいて真実を知ったら、私が傷つくと思ったのだろう。
でも、私は傷つかない。
リキが何者であろうと、私はリキが気になって仕方ない。
私のことを、震える手で抱きしめてくれた優しい吸血鬼が、気になって仕方がない。
自分から身を引いて、苦しい顔をしていたリキが、気になって仕方がないのだから。

