ヴァムピーラ


「待て!」

 河島さんの声に、私はびくりと身体を震わせて立ち止まった。

「カノンちゃん、中に入って」

 レアさんに手を引かれ、私は控え室に入った。なんともいえない気まずい空気が流れる。

「カノンちゃん・・・」
「・・・河島さん、お母さんが・・・その・・・」

 私は、二の句を告げられなかった。
 あまりにも現実からかけ離れた言葉。それは、幻想世界の住人の名前。

「・・・カノンちゃんは、私が見える?」

 レアさんの突然の言葉に、呆然としていた私は頷いた。

「そう、見えるでしょ?私は確かにここに存在している」

 そんな当たり前なことを、悲しそうな顔で言うレアさんに、私は心を奪われた。

「だけど、ヴァンパイアの存在は誰も信じてくれない」
「レアさん・・・」