私が借りていたIDを受付に返して、外に出ると、すっかり暗くなっていた。
「わ・・・」
空を見上げると、綺麗な月が見える。私は慌ててカメラを構えた。だけど、
「あ・・・」
その頃には月に雲がかかってしまった。残念に思いながらもカメラを片付けた。
「へぇ、カメラマン志望ってのは嘘じゃないんだ」
「っ」
いきなりかけられた声に驚いて振り返ると、帽子をかぶったリキがいた。シルバーブルーの瞳に見つめられ、身体が動かなくなる。
「え・・・あ・・・」
言いようのない緊張が私の背中を突き抜けた。
夜を纏ったリキは、自然の王者のような異様な雰囲気を纏っている。先ほどの撮影現場で見たのとは、また違う無表情。
「カノンは、なんでウィッグなんかかぶってんの?」
そう言って近づいてくるリキに、後ずさる私。でも、目が離せない。
それは、あっという間だった。
「っ」
リキの手が魔法のように動いて、私のウィッグを取り払っていた。
金糸の髪が、夜空に晒された。私の、紫の瞳が見開かれた。

