ヴァムピーラ


「カノンちゃん」
「あ」

 気づけば、河島さんが近くに来ていた。

「レア、入って。カノンちゃんもこっちに来て」
「はい」

 レアさんと私は同時に立ち上がった。リキとすれ違う際、

「おもしれぇ女」

 そう耳元でささやかれた。


 河島さんがカメラの前に立ち、私はそのすぐ近くで彼を見つめる。
 河島さんが真剣な顔で見つめているのは、豪奢な光を放つレアさん。
 近くに来れば感じられる。異様な雰囲気を。
 カメラに挑むようなレアさんの表情。それを受けてたっているような河島さんの迫力。
 二人とも、私と同じ空間にいるのに、全く違う次元にいるみたいだった。



 その日全ての撮影が終わり、モデルやスタッフ達が帰っていく。

「河島さん、お疲れ様でした」
「どう、カノンちゃん、何か勉強になったかな?」

 私は肯いた。
 この雰囲気、人というものを撮るという河島さんの気迫。鬼気迫るものがあった。
 そして、それが最高を収めたいという情熱。

「滅多にできない経験ができたと思います」
「そうだね。カノンちゃんはこういう撮影をしたいとは思わないんだったよね」

 河島さんの言葉に、私は答えに困った。