「カノンさんってば、潔癖ねぇ!」
「あのリキ相手だったら気にしなくてもいいのに!」
そんな言葉にもう言葉も出ない。
「カノンちゃん、気にしないで。リキちゃんはちょっと下半身にはだらしないけど、悪い子じゃないのよ」
「そうそう、女の子遊び取ったらリキの命に関わるからね」
コータさんやレアさんまでそんなことを言う。
「なんの話?」
唖然としていた私の背後に、下半身にだらしない男が立っていた。
振り返ってその光を直視して、思わず目を細める。
そんな私の行動をきょとんと見ていたリキが、私の髪に手を伸ばした。正式には、ウィッグに。
「・・・ふーん?」
「・・・何?」
今まで聞いていた話のせいか、声に棘が含まれる。
「なんでこんなのかぶってんの?」
「っ!」
私はウィッグに触れるリキの手を振り払っていた。
これは私の、普通でいられるための鎧。
いきなり振り払われた手を、リキが不思議そうに見ている。
私はリキを睨みつけていた。リキは万人を魅了するような笑みを浮かべて、
「そんな顔してないで笑えば可愛いのに」
「貴方に関係ない」
「まあまあ、カノンちゃん、落ち着いて」
「やだ、カノンさんてば本当に潔癖だったのね。うふふ、私達汚れちゃっててごめんなさいねー」
私達の間に入ろうとするコータさんに、悪びれもせずに、面白がるように言う栞さん達。

