永遠を繋いで

マンションを出て茜くんの所へ走っていくと、まだ眠そうな顔で挨拶をされた。
朝は苦手だと言っていた彼にしてはこの時間に通学するのは珍しい。何か用事があるの、そう訊こうかとあたしの歩幅に合わせて隣を歩く茜くんを見上げると、ぱちりと視線が合った。

「なんか、雰囲気違うっすね」

眠そうな目が細められ、口元が緩く弧を描いた。
俺そういうの好き、と言われ、多分、あたしも今茜くんと同じ顔をしている。

「ピアス開いてたんすね」

「うん、高校入ったくらいに真美とあけたの。嫌いって言われたから外してたけど」

「…俺は似合ってると思いますよ、そういう感じも」

「……ありがと」

あまりにもさらりと言うものだから、顔に熱が集まるのを感じて少し俯いた。
そんなあたしを見て、喉でくつくつと笑う茜くんは反応を楽しんでいるのだろう。このまま意地悪をされてはたまらないので、そういえば、となるべく動揺を悟られないよう言葉を発した。

「いつもより早いけど、何か用事あるの?」

「いや、用事はないですけど、」

「そうなんだ?」

「先輩と一緒に行きたくて」

迷惑でした?なんて視線を外して問い掛けてくる姿は可愛い。
ううん、嬉しいと返せば、今度は茜くんが照れたようにはにかんだ。

「帰りとかも、先輩がいいなら一緒に帰りたいんですけど、」

「え、」

「だめです?」

「…いいよ」

今度は嬉しそうに目を細くした。
ほとんど無表情に近いそれはとても分かりづらいのだろうが、親しくなってからは少しの表情の変化も大分分かるようになった。多分、茜くんはみんなが思っているより表情豊かで、よく笑うと思う。