屈託のない、無邪気な顔で茜くんは笑った。
こんなにも同じ時間を共有してきたのに、それは初めて見る表情だ。本当に嬉しそうに笑う。今日は珍しく表情豊かだな、なんて。
その顔を見ただけで、自然とあたしまで同じ顔になれる。
「気付いてましたか?」
「何に?」
「手、出して先輩」
どちらを出そうかと一瞬考えるものの、両方を差し出すと茜くんの両方の手に握られた。
その行動に不思議に首を傾げて見上げたままでいると、するりと大きな手があたしの左手を撫でるようにすべる。その嬉しそうというか、慈しむような視線を辿るとその先にあるものに大きく目を見開いた。
あたしの左手と、それを撫でた茜くんの左手。
どちらの指にも巻きついた、赤い証。
あたしを悩ませて、存在を疎ましいと思い、けれど欲しくてたまらなかった運命の赤い糸。それが今、心から愛しいと思った人との間にこうして現れた。
驚きと込み上げた色々な感情に思わず声が漏れる。
「これ、いつから、」
「俺もさっき気付いたんですけど」
先輩が告白してくれるあたりに、なんて楽しそうな声色で。
気付いたなら言ってくれればいいのに、そう思うものの、結果としては良かったと安心する。これで、あたしが恐れていた最悪の『もしも』はなくなったわけだ。
これで本当に、本物の恋人同士。
「幸せにします、誰よりも」
まるでプロポーズだ。
柄にもないそんな甘い囁きに、二人で手を繋いだまま笑った。
こんなにも同じ時間を共有してきたのに、それは初めて見る表情だ。本当に嬉しそうに笑う。今日は珍しく表情豊かだな、なんて。
その顔を見ただけで、自然とあたしまで同じ顔になれる。
「気付いてましたか?」
「何に?」
「手、出して先輩」
どちらを出そうかと一瞬考えるものの、両方を差し出すと茜くんの両方の手に握られた。
その行動に不思議に首を傾げて見上げたままでいると、するりと大きな手があたしの左手を撫でるようにすべる。その嬉しそうというか、慈しむような視線を辿るとその先にあるものに大きく目を見開いた。
あたしの左手と、それを撫でた茜くんの左手。
どちらの指にも巻きついた、赤い証。
あたしを悩ませて、存在を疎ましいと思い、けれど欲しくてたまらなかった運命の赤い糸。それが今、心から愛しいと思った人との間にこうして現れた。
驚きと込み上げた色々な感情に思わず声が漏れる。
「これ、いつから、」
「俺もさっき気付いたんですけど」
先輩が告白してくれるあたりに、なんて楽しそうな声色で。
気付いたなら言ってくれればいいのに、そう思うものの、結果としては良かったと安心する。これで、あたしが恐れていた最悪の『もしも』はなくなったわけだ。
これで本当に、本物の恋人同士。
「幸せにします、誰よりも」
まるでプロポーズだ。
柄にもないそんな甘い囁きに、二人で手を繋いだまま笑った。
