永遠を繋いで

「涼太と、話してきた」

やっぱり、という表情を浮かべながら、あたしの次の言葉を待つ。

詳細なんて話す気はなかった。そんなことしたって不安を煽るだけだと思ったからだ。
けれど茜くんが知りたいと言うのなら、話さなければいけないと思った。これから真剣に向き合おうと思うなら、知る権利があるだろう、と。
間違っていると思う人もいるだろう。けれど、あたし達にはこれは必要なことな気がした。

「好きって、言われた」

茜くんの顔を見上げると真っ直ぐな視線と交わった。
けれどそこに、いつもの余裕や自信の含まれた瞳はなくて。感情の読み取れない表情で、瞳だけが不安気にゆらゆらと揺れている。

心臓を掴まれたように、息が苦しい。
もっと、いつもみたいな余裕を見せてよ。こんな時こそ笑ってよ。
そう思うはずなのに、その余裕をなくさせているのがあたしだと思うと少しだけ嬉しい、なんて、矛盾。

けれどその表情にあたしまで切なくなるのには変わりなくて。
言いたくないわけではない。むしろ言わなければいけない。その瞳の不安の色を消すためには。
言葉を吐き出すことを中断していると、急かすようにその先を促した。

「…言って。聞かせて、先輩」

「…涼太のことは選べないって、伝えてきた。友達、だから」

「振った、んですか、」

そっか、と溜め息混じりに呟いた声が耳に届く。
不安な色をのぞかせていた瞳に、安堵が現れた。同時に腕が伸びてきて再びすっぽりと胸の中へ迎え入れられる。
彼はこれが好きらしい。茜くんといると、抱き締められてばかりだ。

「甘えただね、茜くんは」

「真咲先輩だけ、ですよ。俺がこんな風に甘えるの」

肩口にすり寄った茜くんの髪が、頬を擽る。
真咲先輩だけ、その言葉に胸までもが擽られたような、そんな感覚に陥る。

だからずっと、こうするのは俺だけにしてください、胸から伝わる鼓動を聞きながら、返事をする代わりに強く強く、体を抱き締めた。