今日言おう。そう決めて涼太に放課後待っていてほしいと伝えたのは朝会って一番だ。あたしからの誘いが珍しいからか、嬉しそうな笑顔をみせた涼太に胸が痛んだ。
時間が過ぎるのがなんだか恐ろしく長い気がする。そしてようやく向かえた放課後。
しかし放課後とはいえ、まだ廊下は人が多くざわついている。
「ごめん、茜くん。先に帰ってて」
待ってて、ではなく帰ってて、と茜くんと一緒の時間を断ったのは初めてのことだった。
そのせいだろうか、目を丸くして歯切れの悪い返事を小さくこぼす。なんとなく涼太と会うことは言いづらかった。
最近の二人は犬猿の仲と言っても過言ではないくらいに顔を合わせれば喧嘩を始める。そしてその喧嘩も放っておけば激しさを増す一方だから、周りは頭を悩ませているのだ。
主な被害者は蓮なのだけれど。
下手に不安がらせたくはないし、綺麗に片付けたらすぐ報告しようと、あたしはそう思って言ったのだけれど。目の前の顔を見ると、なんだかしゅんと耳を下げた犬のようで。
けれどこんな時、どんな言葉をかけるべきなのかすぐには見つからない。取り繕うためだけの言動や作り笑いは得意なのに、肝心な大事な人を安心させるためにはどうするべきなのか知らないのだ。
茜くんは不安にかられた時は周りをみる冷静さを欠いてしまう。今がまさにそれだ。あたしの気持ちや様子は敏感に察していた彼が嘘のよう。
「用事済んだら、電話していい?」
問い掛けに返事がない。
あたしまで不安になって顔を覗き込めば、腕を引かれてバランスを崩しそうになる。
「待ってます」
予想外にいい笑顔を浮かべる茜くんが目の前にいて、どきりと胸が鳴ると同時にほっとする。
気にしすぎだったのだろうか。
あたしも同じように笑顔でじゃあねと言って来た道を戻るために振り返る。
この緊張感は嫌いだ。嫌に鼓動が早くなる。
人を振るなんて初めてで、どんな顔をしていればいいのか分からない。
けれど立ち止まってばかりもいられないのだ。スカートが翻るのも気にせず、足早に教室へ向かった。
時間が過ぎるのがなんだか恐ろしく長い気がする。そしてようやく向かえた放課後。
しかし放課後とはいえ、まだ廊下は人が多くざわついている。
「ごめん、茜くん。先に帰ってて」
待ってて、ではなく帰ってて、と茜くんと一緒の時間を断ったのは初めてのことだった。
そのせいだろうか、目を丸くして歯切れの悪い返事を小さくこぼす。なんとなく涼太と会うことは言いづらかった。
最近の二人は犬猿の仲と言っても過言ではないくらいに顔を合わせれば喧嘩を始める。そしてその喧嘩も放っておけば激しさを増す一方だから、周りは頭を悩ませているのだ。
主な被害者は蓮なのだけれど。
下手に不安がらせたくはないし、綺麗に片付けたらすぐ報告しようと、あたしはそう思って言ったのだけれど。目の前の顔を見ると、なんだかしゅんと耳を下げた犬のようで。
けれどこんな時、どんな言葉をかけるべきなのかすぐには見つからない。取り繕うためだけの言動や作り笑いは得意なのに、肝心な大事な人を安心させるためにはどうするべきなのか知らないのだ。
茜くんは不安にかられた時は周りをみる冷静さを欠いてしまう。今がまさにそれだ。あたしの気持ちや様子は敏感に察していた彼が嘘のよう。
「用事済んだら、電話していい?」
問い掛けに返事がない。
あたしまで不安になって顔を覗き込めば、腕を引かれてバランスを崩しそうになる。
「待ってます」
予想外にいい笑顔を浮かべる茜くんが目の前にいて、どきりと胸が鳴ると同時にほっとする。
気にしすぎだったのだろうか。
あたしも同じように笑顔でじゃあねと言って来た道を戻るために振り返る。
この緊張感は嫌いだ。嫌に鼓動が早くなる。
人を振るなんて初めてで、どんな顔をしていればいいのか分からない。
けれど立ち止まってばかりもいられないのだ。スカートが翻るのも気にせず、足早に教室へ向かった。
