あれは見間違いだったのではないか、そう思うほどに茜くんは毎日あたしにべったりだった。相変わらず姿を見つければ嬉しそうに駆け寄ってくるし、スキンシップも多い。
ただ一つ、変わったことといえば、あたし自身の問題だ。無意識に一線をひいてしまうというか、壁を作ってしまうというか。
あからさまに行動に出したりはしていない。なんというか、本当に気持ちの問題なのだと思う。表面上のあたしは不自然さなど微塵もなかったと、自信を持って言える。
なのにこの男は。なぜこうしてここにいる。
先程から隣りに座り込む傷んだオレンジ頭を不服そうにじとりと見つめると、場違いな嬉しそうな笑い声をあげた。
「何で笑ってんの」
「いや、真美とか茜より先にお前の異変に気付けて優越感?みたいな」
「うざい」
反論しながらも嬉しそうに笑う涼太に苛立ちが募った。今は余裕を持って接してやることなど出来ない。そもそも理由を知った上で笑っていられるなど、喧嘩を売られているように思う。
誰よりも先に気付いた、なんてよく言ったものだ。今日のは偶々。
茜くんが珍しく学校を休んだ。そして真美と蓮は委員会。だからあたしはこうして一人図書室で暇を持て余していた。
誰もいないのをいいことに、小さく独り言を零した時に丁度涼太が入ってきた。ただそれだけの成り行きだ。余りに粘るので理由を話して今に至る。
しかしこうも苛々させられるなら、言わなければ良かったと後悔する。
「人の不幸を笑うような奴だったのかあんたは」
「違うから。機嫌直せよなー」
「機嫌損ねさせた張本人がよく言うよ。お詫びしてー」
勿論冗談半分だ。喧嘩すれば悪い方が何か奢ってチャラにする、涼太本人が言い出してから、あたし達はそれで成り立っている。
今回も喧嘩とは言わないが似たり寄ったり、デリカシーのない発言の一つくらい許してやろうと思っていた。
反応のないことを疑問に感じちらりと視線をやれば、真剣な顔であたしを見る顔と目が合った。大きな瞳はあたしを捕らえたまま、正面に移動する。距離が近いような気がするが、後ろは柱、両隣りは逃げ場をふさぐようにあたしと涼太の荷物が置いてある。
こんなことならちゃんと椅子に座っておけば良かったと後悔するも時既に遅し。しかし今はそんなことを考えている場合ではない。
この何とも言い難い空気から逃げ出したいのに、逸らすことを許さないと言わんばかりにあたしを捕らえた視線が訴えている。
まるで蛇に睨まれた蛙。嫌な汗が背中を伝う気がした。
ただ一つ、変わったことといえば、あたし自身の問題だ。無意識に一線をひいてしまうというか、壁を作ってしまうというか。
あからさまに行動に出したりはしていない。なんというか、本当に気持ちの問題なのだと思う。表面上のあたしは不自然さなど微塵もなかったと、自信を持って言える。
なのにこの男は。なぜこうしてここにいる。
先程から隣りに座り込む傷んだオレンジ頭を不服そうにじとりと見つめると、場違いな嬉しそうな笑い声をあげた。
「何で笑ってんの」
「いや、真美とか茜より先にお前の異変に気付けて優越感?みたいな」
「うざい」
反論しながらも嬉しそうに笑う涼太に苛立ちが募った。今は余裕を持って接してやることなど出来ない。そもそも理由を知った上で笑っていられるなど、喧嘩を売られているように思う。
誰よりも先に気付いた、なんてよく言ったものだ。今日のは偶々。
茜くんが珍しく学校を休んだ。そして真美と蓮は委員会。だからあたしはこうして一人図書室で暇を持て余していた。
誰もいないのをいいことに、小さく独り言を零した時に丁度涼太が入ってきた。ただそれだけの成り行きだ。余りに粘るので理由を話して今に至る。
しかしこうも苛々させられるなら、言わなければ良かったと後悔する。
「人の不幸を笑うような奴だったのかあんたは」
「違うから。機嫌直せよなー」
「機嫌損ねさせた張本人がよく言うよ。お詫びしてー」
勿論冗談半分だ。喧嘩すれば悪い方が何か奢ってチャラにする、涼太本人が言い出してから、あたし達はそれで成り立っている。
今回も喧嘩とは言わないが似たり寄ったり、デリカシーのない発言の一つくらい許してやろうと思っていた。
反応のないことを疑問に感じちらりと視線をやれば、真剣な顔であたしを見る顔と目が合った。大きな瞳はあたしを捕らえたまま、正面に移動する。距離が近いような気がするが、後ろは柱、両隣りは逃げ場をふさぐようにあたしと涼太の荷物が置いてある。
こんなことならちゃんと椅子に座っておけば良かったと後悔するも時既に遅し。しかし今はそんなことを考えている場合ではない。
この何とも言い難い空気から逃げ出したいのに、逸らすことを許さないと言わんばかりにあたしを捕らえた視線が訴えている。
まるで蛇に睨まれた蛙。嫌な汗が背中を伝う気がした。
