一言で表せば、全て順調だった。
四人の中では一番に就職も決まり、何事も怖いくらいに順調なのだ。
茜くんとの関係は何も変わらない。今まで通りだ。
好きと言うこともなければ、言われることもない。しかし抱き締めてお互いの体温を感じることは増えた。それ以上はない。
本当に友達以上恋人未満という表現がしっくりするほどの曖昧な距離。
正直、告白されるのではないかと、心のどこかで期待をしていた。そしてされないことに落胆したのに、どこかほっとしていたことに気付く。
あたしはきっと、断っただろうから。茜くんも多分それを分かっているのだと思う。
そもそも、想い合っているのだとしたら赤い糸はあたし達を繋ぐものなのではないのだろうか。やはり『偽物』だから現れないのだろうか。
あたし達の運命は別の所へ繋がっているのだろうか、最近そんなことばかり考えるようになった。
気晴らしにと町へ出たのは真美の提案だった。たまには女同士でと蓮が言ってくれたので、お言葉に甘えて貴重なデートの時間を譲ってもらったのだ。
いつも町に出ても誰かしらが一緒なので、女の子ならではの場所で買い物をするのは久しぶりだ。
「ねぇ、真咲もうすぐ誕生日じゃん?丁度休みだしその日みんなでお祝いしたいんだけど、もう茜くんと約束しちゃった?」
「…忘れてた」
「…まぁそんな気はしてたんだけど」
言われてみれば、誕生日まであと一週間まで迫っていた。他のことばかり考えていて気付きもしなかった。とはいえ、毎年友人や誰かしらに言われて自覚していたので何ら驚くことはないのだけれど。
茜くんは知っているだろうか。約束はおろか、あたしから誕生日を教えた記憶はない。かといって今自分から言えば催促をしているような気もする。
一人悶々としていると、真美がくすりと笑った。
「茜くんもちゃんと誘うよー。その前に蓮が言ってるかもしれないけど」
顔に出ていたらしく、恥ずかしくなって視線を逸らしてお礼だけ小さく言った。
その視線を逸らした先の、ジュエリーショップを見てあたしは驚き一瞬でまた視線を外す。間違うことのあるはずがない、よく見慣れた人物。
茜くんと、綺麗な女の人。
心臓がどくりと嫌な音をたてた。どうして、あんなに愛しそうに笑っていたのだろう。あたしはあの顔を良く知っている。
どうして、なんて愚問か。好きなのはあの人で、両想いだなんてただの思い違いだったのかもしれない。
どうしたのと訊く真美に、何でもないと笑顔を作る。今度は、上手く笑えたようだ。
全て順調だった、はずだった。
何かが音をたてて崩れていく気がした。
四人の中では一番に就職も決まり、何事も怖いくらいに順調なのだ。
茜くんとの関係は何も変わらない。今まで通りだ。
好きと言うこともなければ、言われることもない。しかし抱き締めてお互いの体温を感じることは増えた。それ以上はない。
本当に友達以上恋人未満という表現がしっくりするほどの曖昧な距離。
正直、告白されるのではないかと、心のどこかで期待をしていた。そしてされないことに落胆したのに、どこかほっとしていたことに気付く。
あたしはきっと、断っただろうから。茜くんも多分それを分かっているのだと思う。
そもそも、想い合っているのだとしたら赤い糸はあたし達を繋ぐものなのではないのだろうか。やはり『偽物』だから現れないのだろうか。
あたし達の運命は別の所へ繋がっているのだろうか、最近そんなことばかり考えるようになった。
気晴らしにと町へ出たのは真美の提案だった。たまには女同士でと蓮が言ってくれたので、お言葉に甘えて貴重なデートの時間を譲ってもらったのだ。
いつも町に出ても誰かしらが一緒なので、女の子ならではの場所で買い物をするのは久しぶりだ。
「ねぇ、真咲もうすぐ誕生日じゃん?丁度休みだしその日みんなでお祝いしたいんだけど、もう茜くんと約束しちゃった?」
「…忘れてた」
「…まぁそんな気はしてたんだけど」
言われてみれば、誕生日まであと一週間まで迫っていた。他のことばかり考えていて気付きもしなかった。とはいえ、毎年友人や誰かしらに言われて自覚していたので何ら驚くことはないのだけれど。
茜くんは知っているだろうか。約束はおろか、あたしから誕生日を教えた記憶はない。かといって今自分から言えば催促をしているような気もする。
一人悶々としていると、真美がくすりと笑った。
「茜くんもちゃんと誘うよー。その前に蓮が言ってるかもしれないけど」
顔に出ていたらしく、恥ずかしくなって視線を逸らしてお礼だけ小さく言った。
その視線を逸らした先の、ジュエリーショップを見てあたしは驚き一瞬でまた視線を外す。間違うことのあるはずがない、よく見慣れた人物。
茜くんと、綺麗な女の人。
心臓がどくりと嫌な音をたてた。どうして、あんなに愛しそうに笑っていたのだろう。あたしはあの顔を良く知っている。
どうして、なんて愚問か。好きなのはあの人で、両想いだなんてただの思い違いだったのかもしれない。
どうしたのと訊く真美に、何でもないと笑顔を作る。今度は、上手く笑えたようだ。
全て順調だった、はずだった。
何かが音をたてて崩れていく気がした。
