永遠を繋いで

一度許してしまえば元通り、というより以前よりも過剰と言った方が正解かもしれない。確かにあたしは言った、寂しかった、と。しかしこれは些かやりすぎな気がしないでもない。

先程から突き刺さるような視線が痛い。これは自意識過剰なわけでは決してないと思う。遠巻きに見るギャラリーが増えているのも、きっと気のせいではない。
後ろから巻き付くようにまわされた腕は緩められることなく同じ位置にある。恐らく暑いのだろう、いつもより体温が高いように思う。色んな意味でではあるが、あたしも体が熱い。
しかしこの様子からすると、離して、と言ったところで聞いてはくれないだろう。

「ねぇ、何なのこの子どうしたの?ここ教室ってわかってる?」

「俺先輩と違って頭良いんで分かります」

「なんかこの顔言い返す気失せる…お前のクールキャラどこいったの」

隣りでアイスを頬張る涼太の顔が引きつっている。
若干引き気味な涼太に対し、茜くんにしては珍しく分かりやすいほど頬が弛んでいるのがうかがえた。いつもの生意気さなどまるでなく、先日辛辣な言葉を放たれた女子が見れば発狂しかねない。

「食欲なくなったわ。食う?」

「んー」

手を伸ばせばそれよりも先に茜くんの手がそれを遮った。
あまりの早さに驚いて首だけを振り返ると、眉間に皺を寄せたまま残っていたアイスを全て口に放り込んだ茜くんの顔が見えた。
目を丸くして見るあたし達に一言、だめっすよ、とアイスを飲み込んで言い放った。

「今更気にすることかよ」

「…今だからっすよ」

面白くなさそうに顔をしかめる涼太と、対照的に悪戯に口元に弧を描く茜くん。その笑顔は何か意味を含んでいるのだろう、涼太が不機嫌を露わにし始める。
なんだか最近涼太は彼が絡むとすぐこんな顔を見せる。以前はこんなこともなく仲良くやっていたので、理由は分からない。

休み時間終了のチャイムが鳴ると、すっと腕を離して立ち上がった。

「俺がいないからって、涼太先輩と浮気しないで下さいね」

いい笑顔付きで何やらとんでもない爆弾を落としていった。
聞いていたギャラリーと共に涼太も口をあんぐりと開けた。あたしも例外ではないのだけれど。
颯爽と去っていく茜くんを呆然と見ていると、涼太がぽつりと呟いた。

「両想い、だったんだ」