「……従兄弟が、1ヶ月前ぐらいから…変、なんだよ…そいつ、彰(アキラ)って言うんだけど…小学4年で…野球が大好きで…にこにこよく笑うやつ……だった」
ぽつりぽつりと話を始めた少年の言葉に違和感を覚えて少女は首を傾げる。
「…だった?」
「ある日、全く笑わなくなったんだ…苦しそうな顔をするようになった」
「…それで、感情屋のせいだって言うの?なんで?証拠なんてないじゃない」
「本人に聞いたんだよ…『どうしたんだ』って…そしたら…『感情屋さんで"苦しい"って感情を"楽しい"って感情で買ったんだよ』って」
信じられないと言ったように少女は目を見開き
少年は少女の肩に手を置く。
「だから…あの都市伝説は本当なんだよ…"そいつの求める感情を与えて、代わりにそいつ感情を一つ奪っていく感情屋"」
「そんな…」
ザーザーとさっきより酷くなった雨の音を聞きながら、二人はどちらかが動くこともなく、その場に立ち尽くした………。
