大きな怪我じゃなくてよかったと、改めて思った。
もしも、亜紀がいなくなってしまったら。
初めて、町田はそれを考え、



何も考えられなくなった。


ため息が、一つ。
1人の夜に浮かんだ。


なあ。
ずっと、一緒にいられるのかな。
俺たち。


そんなことを考えて、町田はくすりと笑った。
何考えてんだ、俺と、自嘲した。


夫婦じゃあるまいし。
無理に決まっているだろう。


そんなことを考えて、町田は一瞬ドキリとなった。


夫婦って。
何考えてんだか、俺。


その言葉におかしくなった。



いつか。
お互い、自分の決めた道を選んで。
道を違えていくんだろうな。



時計を見て、町田は大きな伸びをした。
長い1日だったなと、息を吐いた。







互いが互いに抱いているその想いに。
町田も。
亜紀も。
名前を付けられなかった。
なんと名付けるべきものか。
判らないまま。
7年が過ぎた。


2人が名前を見つけたとき。
きっと、2人は変わるだろう。


その未来が2人に訪れるのは。

もう少し、先のことだった。







【了】