気がつくと目の前の皿にはもうスープは残っていない

夢中でスプーンを動かしていた小夜は空になった皿を見つめた

「小夜?おかわりをよそってあげようか?」

隣に座る遥は目を細めて優しく声をかけた

何も食べていなかった小夜はこの一皿でもうお腹が一杯だ

お腹以外にも一杯になってしまったようで涙が溢れそうになる

遥の問いかけに首を横にブンブンと振って答える

「そうか…もう食べられないか…」

いまだに握りしめていたスプーンを優しく取り上げ、後片付けを始めた

遥の後ろ姿…洗い物をする音…鍋から漂うスープの匂い…
どれもが五感を刺激して、暗闇にいた小夜を急に明るい元の世界へと引き戻してくれた