その日から祖母の機嫌は目に見えて良くなった

自分の着物や宝石類をリフォームに出したり、あちらこちらへ手紙を出したり、電話をかけたりと忙しそうにしている

近所の人達にまで愛想よく話し掛け、年明けに結納をすると言いふらしている

反対に小夜はどんどん塞ぎ込んでいった
祖母を止められる人などいないことはよく知っている

今考えれば父と母が言い争っていたのはこのことだろう

…このままあの人と結婚しなくちゃいけないの?
あぁ…そんなのは嫌だ
でも…祖母も桜井さんも止められそうにない…
恐らく父にも無理なのだろう

両手を胸の前で祈るように握りしめ、深呼吸をした

いつもならこれで勇気が湧いてくるのに今は何も感じない

…どうしよう…