…何なの?もう…
目立たないように過ごしてきたはずが…
返して…あたしの平和な日々!

午後のデスクワークでも周りは何か言いたげに視線を向けてきたが、近藤の質問をピシャリと撥ね付けてからはあからさまな興味は感じなくなった

無心にパソコンに向かい、残業もせずに退社した

正面玄関に立つ守衛と挨拶を交わしていると、道路の向こうから小夜を呼ぶ声がした

「さあや~!おかえり~!」

…ってハル!?
…まだ会社を数歩出たとこだから…おかえりは…早いよ

「…ただいま」

駆け寄ってきた遥にだけ聞こえるような小さな声で答えた

「アハッ!間に合って良かった
さあ!帰ろうか…
これから夕飯を作るんだけど、何がいい?」

当たり前のように小夜と手を繋ぎ、遠い日のデートのようにいつもの待ち合わせの場所へと連れてきた

…あっ!ハルの車だ!

薄汚れてしまった遥の黄色い車が、路肩に停めてあるのを見つけた

「今日、実家に取りに行ったんだ
まったく、お袋のヤツ…一度も洗車してないんだぜ
乗り回してた癖に…」

ちょっと拗ねた表情で車の屋根を撫でていた

「そうなんだ…」

乗り込んだ助手席は遥とは違う匂いがする

「ねえ…この車、綺麗にしてあげようよ」

そんなことを思い立って口にすると、遥は嬉しそうにハンドルに手を掛けた