一人で飛行機に乗り帰国したあの日から、温室の前で会うまでの出来事を遥の腕の中で話した

全てを黙って聞いていた遥は小夜を力強く抱きしめ、耳元で囁いた

「ごめんな…こんなにも大切なさあやを苦しめて…僕はなんて馬鹿で愚かなんだ
さあやの友達には感謝しなきゃいけないな
もしも、僕たちだけなら…この腕の中にさあやはいない…

でも…あの場所に僕が行くのをなぜ由美子さんと甲斐 慎太郎は分かったんだ?
それに…さあやのことを応援していた甲斐 慎太郎はマスコミの前になんで一緒に出たりしたんだ?」

…そうよね…由美子さんも慎太郎さんも謎な行動が多いから、あまり考えたことないけど…
やっぱり不自然よね…

遥の言葉に一度封印した疑問を呼び起こした

「そうだよね…おかしいよね…
次回作のモデルっていうのも変だよね?」

二人は心を開いて互いの話を聞いた

気づくと窓の外は白々と明るくなり、一晩中語り合っていたようだ

冷たい水で顔を洗い、小夜は会社へと行く準備をした

その間にキッチンでは遥が朝食を作り、小さなテーブルに並べた

チーズの入ったオムレツには、ケチャップでハートが書かれている

…きゃっ!メイドさんが来ました~!
ここは…喫茶ハルハルですか?

メイクでは隠しきれない浮腫んだ顔で遥と二人、向かい合って朝食を食べた