アイ・ラブ・おデブ【完結】

母屋は映画に出てくるような古い洋館みたいな外観をしていた

薔薇園は敷地の奥まった場所のようで、広い庭を突っ切った先に正面玄関があるらしい

遥の手に導かれ、芝生の広場を横切っていると庭に面したテラスから二人を呼ぶ声がした

「ちょっと~!
そこのお二人さ~ん!
夕飯の支度ができてるわよ~」

いつものように明るい由美子が二人を建物の中へと誘う

何も話さずに手を繋いで歩いていた遥たちは顔を見合わせ、表情を和らげた

呼ばれたテラスに近づき明るい室内を覗くと、テーブルに食事が用意されている

「顔を洗ってきます」

涙で浮腫んだ顔を明るい室内で見られるのは恥ずかしく、一度洗面所に行きたかった

部屋の隅に外に控えていたメイドに案内してもらい、広い化粧室にやって来た

鏡に写る顔は想像以上に悲惨な状況で腫れた瞼に、剥がれ落ちたマスカラ、ファンデーションもほとんど残っていない

…はぁ~…酷い有り様…

ポーチから化粧品を取りだし、水でさっぱりとした顔を塗り替えた

化粧直しをしたくらいでは誤魔化せるような浮腫みではないが、さっきよりもマシになったような気がする

腫れた瞼の下の少し幸せそうな瞳と、どうしても緩む口許は隠すことの出来ない心の様子を表していた