「待て!!」

扉に掛けた手を掴み、威嚇するような低い声で女を止めた

「何よアンタ!
痛いじゃないの!…離しなさいよ」

女は遥の手から逃れようと必死に腕を振るが、がっしりと掴まれて余計に痛いだけだ

腕を離してもらえないと考えた女は、遥から素早く体を離して足を振り上げた

遠心力がついた細く長い足は、半円を描いて遥のお腹に勢いよく収まった

「離せと言ったでしょ!
この腑抜け男が!」

掴んだ腕を離し、自分のお腹を押さえて踞る遥を見下ろして怒り口調で吐き捨てた

…いって~…
くそっ…なんてキックをするんだ

そんな反撃が来るとは予想しておらず、まともに受けてしまった

しかし、こんな所で座っている場合ではない

…この女を止めなければ、中にいるさあやを守ることはできない

痛みを堪えて立ち上がり、扉を背に女を睨んだ

「この中には入らせない
小夜には指一本も触れさせない!」

腹に力が入らないができる限りの声を振り絞り叫んだ

「アハハハ~!
可笑しなことを言うんだね!
そんなんで大切な物を守っているつもり?
それとも、罪滅ぼしか何かのつもりなのかい?」

足を肩幅に広げて立ち、腕を組んで喧嘩腰に女は聞いてきた