アイ・ラブ・おデブ【完結】

唇を噛み、門の側に来ると小さな看板を見つけた

"バラ園 開放中
どうぞご自由にお入り下さい"

どうやら個人宅のバラ園を見学自由にしているらしい

こんな穴場スポットに来るなんて女性慣れをしているか、今夜を特別に演出しているのかと余計な想像をした

自転車も車も何台か停めてあり、二人の他にも見学者がいることが窺えた

遥は辺りを気にしながらその中へと踏み入れた

薔薇の甘い匂いが辺りを包み、深く吸い込めば気持ちを穏やかにさせてくれそうである

しかし、息を潜め、鋭い視線を巡らす遥には薔薇を楽しむ余裕は微塵もなかった

個人の所有にしては広く、何十種類もの形も色も大きさも違う花が、その美しさを競うように咲き誇っていた

見渡す小路には二人の姿はなく奥に進むとガラス張りの温室が見えた

…あの中か?
どうする…入っていけば見つかる
…入り口を見張るか…

小さな薔薇が幾つも咲く、こんもりとした木の裏に身を屈めて隠れた

いつの間にか日は沈み、小路の脇に立つ庭園灯が薄暗いバラ園を照らしていた

日の光りの中の薔薇達も美しく輝いて見えたが、暗がりの中で僅かな明かりに照されるとその妖艶な美しさを増していた

香しい匂いも薄れることなく、より一層増して辺りを漂っているようだ