30分後、大きなスーツケースの傍らで遥は待っていた

「お待たせしました…」

礼儀正しくそう告げるジョエルの顔には、疲労の色がはっきりと表れていた

「少し話をしませんか?」

そう誘ったのはジョエルだが、遥も口にしようと思っていた言葉である

ラウンジの隅で向かい合い、コーヒーを頼む

どう切り出そうかと思案していると、明るい声でジョエルが話し出した

「目が覚めたみたいですね」

勿論、夜の眠りから目覚めたという意味で言ったのではない

30分の間にシャワーを済ませ、久しぶりに髭を剃った

髪も切ってさっぱりとしたかったがそんな時間はなく、アメニティのヘアゴムで半分纏めていた

ただそれをしただけだが、気持ちもスッキリとし、顔を上げられるようになった

「はい…けど…」

「そうですね…まだ解決した訳ではありませんね

…二日後にお父さんを荼毘に附すそうです
それまで環さんは傍に付き添い、自分を見つめ直すでしょう
いや…二日では考えきれないでしょうが…」

そう言いきり、スッキリとした表情を見せた