次の日、ホテルの電話が鳴る音で遥は目が覚めた

…夢の中ですら、ゆっくりと会わせてもらえないのか…

自分に電話をかけてくる相手など分かっている
憂鬱な気持ちで受話器を上げた

「…もしもし」

だが予想を裏切り、男の声が流暢なフランス語で聞こえてきた

「おはようございます…
笹原さん…ジョエルです…
あの…昨夜環さんのお父さんが亡くなりました…
それで…遺言通りに今日はご自宅にお送りします…」

…そうか…亡くなったんだ
じゃあ、ニューヨークへ発つ日も近くなったな…

「なので今から環さんの荷物を取りに行きます…
はい…部屋もチェックアウトしましょう
それでは…30分後にロビーで…」

目覚めの電話は用件を手短に伝えると再び静かになった