店の女将は快く、遥をカウンターの奥へと誘った

「何にしますか?」

温かなおしぼりとつきだしを目の前に置きながら注文を聞いた

久しぶりに心からほっこりする食事をした

「ご馳走さま…」

席で支払いを済ませて外に出ると、身を切るような冷たい風が吹いていた

「毎度ありがとね!
またお越しくださいませ」

そんな言葉に見送られ、首を縮めて駅までの道を足早に歩いた

小夜からの手紙を読んだ勢いであの店まで行ってしまった

もう少しで会社まで押しかけるところだった

頭の中の警報が鳴り響き、あの店へと向かわせた

ホテルの暗い部屋に戻り、ガックリと肩を落とした

…駄目だ…環との関係がそのままでは…
このまま会えば…突っ走れば…愛しい人を傷つけてしまう
今の僕に会わす顔など無いのだ…

悪魔のように絡み付くこの因縁を、断ち切る術を遥は模作し始めた