地下鉄を乗り継ぎ、何度も歩いたことのある道をゆっくりと進む

…ここを手を繋いで一緒に歩いた
僕の隣には、はにかんで笑う君がいた

目指していた灯りが見えてきた
そして、吸い込まれるようにその扉を開けた

「いらっしゃい!」

威勢の良い声が遥を迎え入れてくれた

その声にハッと我に返り、自分の格好が気になり出した

ボサボサの髪に伸び放題の髭、ヨレヨレのジャケットと履き古したスニーカー…まるで路上生活をしているかのようだ
洗濯もシャワーも浴びているから臭いはしないが…

…環はあのジョエルを薄汚れた紳士なんて言っていたが…
ハハッ…僕の方が落ちぶれている…

勢いだけでここまで来たが、こんな身なりの男は追い出されるかもしれないと身構えた

「さあ!奥にどうぞ!
外は寒かったでしょう」