冬晴れの茜色の空を見上げ、物思いに耽る女がいた

…この空のずっと向こうは晴れているのかな?
パリの夕焼けはどんなだろう…
もう一度、隣で夕焼け空を見たいな

「お待たせしました
そっちも俺が持ちます」

…あぁ…そうだった
あたし…また、現実逃避していた…

「大丈夫よ…ありがとう…」

同じ総務部の後輩…桐島(キリシマ)が大きなコンビニ袋を3つも持ち、エレベーターのボタンを器用に押した

はぁ~…

無意識に大きなため息が小夜の口から吐き出された

「疲れましたね…引っ越しなんて…
いつもならこんな体力は使わないですから…」

細い目をさらに細めて、桐島は爽やかな笑顔を向けた

イケメンと言われる部類ではないが、人当たりも柔らかく気遣いのできる男だ