優しい声で環に語りかけたが、そこから動こうとしない

ジョエルは両肩をそっと掴み、立ち上がらせた

「お父さんの残された時間は長くはありません…
愛する娘が穏やかに見送ってあげましょう…」

ジョエルの支えが無ければ立つことさえ出来ない
口許を押さえ、ふらつく足をゆっくりと前に出した

そこからどんな風に父の病室に戻ったのか分からないが、気がつけばベッドサイドで座っていた

「父さん…」

小さく呟いた呼び掛けに、それまで閉じていた瞼がゆっくりと動いた

「父さんっ!」

腰を浮かせ顔を近づけた

開いた瞳が環を捉えると一筋の涙がこぼれ落ちた

そして、慈愛に満ちた瞳で微笑み、静かに閉じられた