すでに冷たくなった缶を両手で包むようにしている
その手は心做しか小さく震えていた

ジョエルはゆっくりと立ち上がり、隣の椅子に座った

「環さん…僕はあなたを責めているのではありません
悲しんで…哀れんでいます

だってそうでしょう?
血の繋がった両親のことを"あなたが嫌っている"…僕の方が知っているんだ

この2年は僕の方が二人と過ごした時間は多い…

色々な話をしました
勿論、結婚生活が続かなかった謝罪もしました
環さんの子供の頃の話、お二人の馴れ初め…
初めの頃はお母さんも楽しく話をしてくださいました…
最近では…もう僕のことなど…
お父さんのことまで忘れてしまったようです…

順子さん夫婦と友明さん家族はあなたの分も傍にいて、ずっと二人を支えてきました

お母さんの身元引き受け人は順子さんです

後は自分で考えてください…

さあ…病室に戻りましょう…
お父さんが待っていますよ!」