次の日は、意を決して直接環の高級な住まいを訪ねることにした

入り口にいる警備員やコンシェルジュと呼ばれる受付を通り抜けるために、慎太郎と共に来た

来客用の駐車スペースに停めた車内で深呼吸をしてからその一歩を踏み出した

予想通りに建物の中に入る前に足止めされた

屈強な男性が肩幅に足を開き、腕組みをして二人の前に立ち塞がる

仔猫のように襟首を摘ままれて追い出されるのではと内心ビクビクしていたが、胸元から取り出した名刺を見せながら慎太郎が話しかけた

強面を目の前にしても少しも怯まずに流暢な言葉を繰り出す慎太郎は、とても頼りがいのある紳士に見える

…そういえば慎太郎さんって何をしている人?
美術館の方は手伝い程度なんて言ってたから…本業は何を?
こんなにもフランス語が堪能で自由な時間がある仕事…って?

「…さん…小夜さん!
さあ中に入りましょうか」

声をかけられて周りを見ると、強面の警備員は定位置と思われるドアの横に移動していた

慎太郎の背中を追いかけるように建物の中へと足を進めた

中で待ち受けているコンシェルジュにも名刺を渡して、住人への取り次ぎを依頼する

…ハルに会えるのかな…
ここまで来て弱気になってどうするの!
そう!みんなの思いを伝えなくちゃ!
ハルの帰りを待っているって

コンシェルジュが内線らしい電話をかけているのを横目に、入り口を見ると遥達以外でもう一人知っている顔を見つけた