アイ・ラブ・おデブ【完結】

…えっ…どうしてここに…

かなりの距離があるから見間違えかもしれない…だがチラリと見えたその横顔も数日前に別れを告げた恋人だ

思わず腰を浮かせ、彼の動きから目が離せない

周りの雑音はすっかり消え失せ、小夜の頭の中は静まり返っていた

細身のダークな色のスーツに淡いオレンジ色のネクタイ、髪を後ろに緩く流し固めている

…ハル…誰かの結婚式かな?
スーツ着ている所…初めて見た…タキシード姿…を見たことあるか…
格好いい…もっと近くで見たい…

お揃いの大きな紙袋をぶら下げた大人っぽい女性に、声をかけられている

柔らかな笑顔で何か言葉を交わし、相手の紙袋を受け取った

ギュウと胸の辺りが苦しくなり、小夜は椅子にペタンと座った

苦しくて見たくないのに目が離せない

「…さん…小夜さん…
ご気分がすぐれませんか?」

声が聞こえた方を向くと、すぐ傍に見たことのある男性が心配そうに立っている

「あっ…美術館の…オーナーさん」

先日、由美子に紹介をされたあの男性だった