隣にはチャイルドシートが取り付けてあり、それだけでマサの幸せそうな家族の姿を感じて今の孤独を思い起こしてしまう

都内に入り、夕暮れの高速道路からは明かりのついたオフィスが見える

…明日から仕事だ…
あっ!ハルのランチが…ない…
そうだった…ハルはいないんだ…
そっか…いないんだ…

小夜の瞳にじわりと涙が滲む

…駄目…信じるって決めたんじゃないの…
そう…すぐに帰ってくる…

信号機のように今の小夜の気持ちは目まぐるしく変化する

どうしてもすぐに赤信号へと変わってしまう

青が続くように御守りに触れ目を閉じて願った

「夕飯…うちで食べて行く?」

バックミラー越しに優しく聞いてくれた

「…いいえ…ありがとうございます
たぶん…アパートにも何かあると思うので…」

一人になりたくはないが、マサの幸せな家族と過ごせる心のゆとりは今は持ち合わせていない

アパートまでを道案内しスーツケースを部屋に運んでもらった

「ありがとうございました
今度、お土産を持って行きますね…」

そう言葉にしてドアを閉めた