「いや…疲れたから…失礼するよ」

環の顔を見ずに遥が小さな声で断った

「折角、遥のために用意したのよ…喜ばせたくて!
パリの夜景も一望出来るから小夜ちゃんにも丁度いいんじゃないかしら?
ねえ…行きましょ!」

遥の腕に絡み付きしつこく誘う…まるで獲物を締め上げる蛇のように

この前会った時には"小夜さん"と呼んでいたが今は"小夜ちゃん"と子供扱いをした

遥の表情はますます曇り、拳を握りしめている

こんなに疲れているのだからきっと断ると小夜は考えていたが遥の口からは逆の答えが出た

「あぁ…分かった」

思わず遥の顔を見たが、何の感情も読み取れぬほど冷たい表情をしていた

…ハル…

初めて見る遥の様子に抱き締めたくなった

だがそれを阻むように環が待たせてある車へと連れていってしまった