グラスを取りに席を立ったトニーの椅子に環は座り、隣の遥と親しげに話している

時には遥の腕に触れたり、自分の艶やかな栗色の髪をかき上げたり、小夜と握り合った華奢な手が妖艶に動く

遥も久しぶりに会った綺麗な彼女との会話を楽しんでいるようだった

小夜も会話に入れるよう遥は話を振ってくれるが、トニーに合わせているのか環はフランス語で話していた

3人は愉しげに声をあげて笑い、同じテーブルにいる小夜も笑顔で座っていた

トニーが後片付けに消えると環は急に表情を曇らせた

「遥…ちょっと頼みがあるの…」

ワイングラスを持つ遥の手にそっと手を重ね、上目使いに小首を傾げて切り出した

「もうしばらくこっちにはいるんでしょ?
明後日…私に時間をくれないかしら?
…お願い!こんなこと頼めるの…遥しかいないのよ…」

更に遥との距離を縮めて頼み込んだ