紅梅サドン

火曜日の雨は一日中降り続いている。

仕事を終え、色とりどりの傘の大群に占領されている新宿の町を歩く。

革靴にはジンワリと水分が浸透してきて、その感覚が余計に家路に着く僕の足を急がせた。


腕時計の針に目を落とすと、7時36分。

真澄が僕に、誕生日でも何でもないある日に突然くれた腕時計。

何でも無い日に突然プレゼントをするのが、真澄は好きだった。

もう二年も経つのに、壊れてはくれない悲観的に丈夫な腕時計。


『丈夫なのが一番』

そう言って、僕に時計をプレゼントした真澄の屈託ない言葉を思い出す。

雨音が僕の差す安いビニール傘を貫こうとして、何度も何度も激しい音階を打ちつけている。