紅梅サドン

想像していた通りだった。

玄関に見慣れないスニーカーが見える。男の靴だ。


『嘘つくな、殺すぞ』

その言葉が僕の脳内をグルグルとマラソンする。

何て言ったら信じてもらえるんだろう。

どんな言葉も性行為していない証明にはならない。

泊めたという事は、そういう事だ。

六畳のテーブルに、難しい顔をして座る雪子が玄関から見えた。

その向かい側に、僕には背中を向けた長めのサラサラした薄い茶髪の男が見える。

白いシャツ。
意外と爽やかなTシャツだ。
ビームスのだ。
だって同じのを僕が持ってる。

その男の後ろ姿は女性かと思う位に華奢な背中だった。

あまりゴツい人ではなさそうだ。

少なからずも僕は希望を手に入れた。