紅梅サドン

それとも最近購入したばかりのパソコンが、今頃秋葉原で現金に姿を変えているかもしれない。

雪子の保険証や通帳が手元にあるとは言え、偽物だったら意味がない。

朝、家を出た時からグルグルと思考は巡り、様々な最悪の想定を、僕は僕自身に朝から何度もプレゼンしている。


一瞬も酔わせてはくれない目の前の水割りを、僕は見つめる。

グラスの水滴はやがてテーブルにだらしなく落ちていく。

やがて消えゆく水滴に似た不安な未来を抱えた僕自身も、背中に嫌な汗ばかりを落としていた。