紅梅サドン

僕はドキリとして、運転席に座る矢萩を物凄い速さで見てしまった。

矢萩はハンドルを握り前方を向いたまま、何故か恐ろしく真顔だった。


不意だったにせよ、その草食動物並みの反応速度には自分でも驚く。


「じ、自分で作ったんだよ。」

僕はできる限り冷静な声を出す。

もう一度コッソリと矢萩の横顔を見たが、やはり真顔のままだ。




矢萩はくわえていた煙草にゆっくりと火をつけながら言った。




「ーー嘘つくな。殺すぞ。」