紅梅サドン

その晩ーー頭が真っ二つに割れる夢を見た。

僕は全身に汗をかいて飛び起きた。

台所からはいつもの様に、雪子が使う包丁の小気味良いリズムが聞こえる。

窓からの太陽光は見えず、曇り空が広がっている。

酷い二日酔いの体を抱えた僕は、朝から太陽に照らされずに済んで安堵した。

ルノーはまだ隣で眠っている。

隣の部屋から次郎の寝息も聞こえる。

二日酔いは、脳内で頭痛という名の針をザクザクと刺す。

痛い。

吐く息が日本酒の匂いに侵されている。


思い出したーー。


矢萩。
真澄の妊娠。

公園の日本酒。
泥酔。

暴言の数々。

雪子さんに『セックスがどうのこうの』と何度も連呼した気がする。

三十過ぎた男の涙。

ーーやらかした。

思い出したくも無い最低な言葉の数々を、僕は悲しいくらい鮮明に思い出した。