紅梅サドン

雪子だったーー。



「私の事はどう言われようと、全く構いません。

でも、秋さんーー。

真澄さんを悪く言うのはやめましょう。

秋さんが、一度は心から愛した女性なのでしょう?

そんな悲しい事ーー駄目です。

秋さんーーー。

秋さんなら、分かってくれますよね?」

雪子はそう言って、僕の思い切りぶつけた頭の上に、その白い柔らかな手のひらをそっと乗せた。

僕は倒れ込んだ姿勢のまま泣いていた。

雪子が僕を優しく見つめる。

隣の居間からルノーと次郎が見つめる。

最低な言葉を吐いた最低で情けないーー“僕”がいる。

僕がこんなに人前で泣いたのは初めてだった。

しかしそんな事は忘れてしまうくらい、僕は小さな冷蔵庫にもたれながら泣き続けていた。

その濁流の様な涙は心の奥の奥まで容赦なく染み込んできて、いつまでも消えずに溢れ出していた。