紅梅サドン

「ーー雪子さん、全部知ってたんだろ?

真澄が僕の彼女だった事も、僕に別れを告げてイギリスに行った事もーー。

矢萩から真澄の妊娠の事まで聞いてさ」

雪子は口を固く閉じ僕を見つめた。

「ーー秋さん、本当にごめんなさい。

でも、私は構いませんから。

秋さんが、真澄さんの事を今も忘れられないとしてもーー。

秋さんの気持ちをどうこうしようなどとは考えていません。

ハガキを黙って見たりして最低でした。

本当にごめんなさいーー。本当に。」

雪子はその場で深く頭を下げた。

「まあいいじゃん。許してあげなよ、秋ジイ。

雪子も悪気は無かったんだし。

それに真澄ちゃんが妊娠したんだったら、秋ジイも諦めるしかねえべーー。」

ルノーは妊娠には驚いた様だが、冷静に声を出した。

しかし僕は、どこにぶつけたら良いのか分からないこの気持ちを、全て吐き出してしまっていた。

せき止められた濁流が一目散に流れ出す様に、何もためらう事などはなかった。