紅梅サドン

押し黙ったままの僕に、矢萩は静かに口を開いた。

「いやーーーーーーーーーそれがな。

真澄ちゃんの腹ん中にーーそのイギリス人のーーー。

つい最近、判明したらしいけどな。

出産まで働いて、また頑張って復帰するつもりなんだろ。

ーー秋、雪子さんの事を考えろよ。

真澄ちゃんは真澄ちゃんで、違う人生を歩んでんだ。

分かるだろ、秋。」

矢萩は雪子を、僕の“彼女”だと思っているからこそ、真澄の現実を話したのだろう。

くわえた煙草の煙が目に染みて、僕は乱暴にその煙草をもみ消した。


僕は黙って席を立ち上がると、矢萩の声を振り切って店を出た。