紅梅サドン

その日は、新しいクライアントとの会議が幾つか重なって多忙になり、僕は帰りが遅くなった。

夜九時を過ぎた頃、ルノーからの携帯が鳴った。

『ーー秋ジイ?お疲れ。雪子から今日も連絡無かった。

次郎も寝たから、俺も寝るねえ。』

『ーーああ、分かった。適当に何か食って帰るから先に寝ててくれ。

わざわざありがとうな。』

僕がそう言って電話を切ろうとすると、ルノーが“そういえばーー”と声を出した。

『真澄ちゃん宛てのセールスのハガキがまた来てたから、隠して置いたよ。

こないだ秋ジイに見せたヤツと同じ会社からのーー。

第三弾・高級化粧品特売セールって書いてあった。

確かこないだ第二弾やったばっかりなのに、一体何弾まで続くのかねえ。』

そう言って電話は糸の様にプツンと切れた。