紅梅サドン

僕は次郎に『気を付けてな』と声を掛けその後ろ姿を見送った。


部屋に一人取り残された僕は、たった一人分の小さな溜め息を吐いた。

ラガーマン旦那の涙の後が、畳の上にうっすらと跡を残していた。

窓からの太陽がその涙の跡を照らして、跡形も無く消し去ってゆく。


誰も居なくなった六畳間は、さっきまでの風景とは異なり、まるで僕の知らない部屋の様に見えた。



僕は気づいていた。

あのラガーマンは、『僕』だ。