紅梅サドン

「大人のオシャレがお前みたいなクソガキに、分かってたまるか。

ーーそれより次郎、

雪子さんとルノーはどうしたんだよ?」

テーブルには、おにぎりが二つ作って置いてある。

まだそのおにぎりは温かいようだった。

「ルノー兄ちゃんが言うには、何か『明日の準備だ』とか言ってさ。

渋谷の東急ハンズに行くって、ついさっき二人揃って出てったよ。

明日、福島で何すんだよ?意味不明だぞーー。

もしかして雪ちゃんに何かあったのか?教えろよ、田辺君」

「まあまあ、細かい事は気にするなよ、ーーー次郎君。

じゃあな。
仕事行って来るわ」

紺色のネクタイを締め直すと、僕は真夏だというのにヒンヤリとした玄関を後にした。