紅梅サドン

「大変御迷惑をお掛けしますが、ルノーと次郎を何卒宜しく申し上げます。

何か不都合がございましたら、御遠慮無くおっしゃってね。

雪子さんにも同じくお伝え下さいませ」

シスターは深々と頭を下げた。

その姿は無宗教な僕にさえ神々しく、慈しみを湛えた聖母の姿に見えた。

駅で去ってゆくシスターの後ろ姿を見つめた。

『寂しさの棘ーー』

次郎の血色の良い顔からはそんな事は微塵も想像できない。

次郎のトゲーー。

シスターの言葉が自宅への帰り道を歩く僕の頭をずっと駆け巡っていた。