紅梅サドン

「ああ、はい。田辺と申します。ルノーが大変お世話になりましてーー。」

ルノーが言ってた電話はこの事か。

仕事場にかけてくるという事は、やはり遠縁と言えども、身元がキチンとしているか確かめるためだろうか。

ルノーは『東京に遠縁の親戚がいるから、次郎がロンドンへ立つまでの3か月の間そこに預かってもらう』と嘘をついて施設を出てきている。

まあ施設の方達からすれば当然の事だ。

ルノーと次郎の兄弟を少しの間預かるだけとはいえ、その親戚の身元確認くらいはするだろう。

「ルノー?ああルノーもお邪魔していたのですか。

田辺さんのお住まいと同じ世田谷区ですものね。

遠縁のあなた様が東京の、それも世田谷にいらっしゃるなんて施設の私共も初耳でしたから。

次郎も喜んでいました。ルノーと住まいが近くなるって。

今日はこれで失礼致します。来週の七月初めの日曜日、今度は御自宅にお電話致しますので。

本当にお手数をおかけしました。」

穏やかな声で丁寧に挨拶を済ませた院長はそのまま電話を切った。