涼さんは、布団を握り締めて泣いていた。


先生が出ていくと、鼻水をすすりながら、涼さんが話し始めた。


「美咲、お前は事故に遭ったんだ」

重い一言だった。


事故に…?


「し、知らない、あたし…」


首を振ってから涼さんは話を続けた。


その後の話をまとめると、

あたしとママ、パパは今日から2日前、つまり2月20日に隣の県の水族館へ車で向かっていたらしい。


その行きしなに、事故に遭った。
高速道路で暴走車が逆走し、それを避けようとしたトラックに激突。後ろや横からも車が車をよけようとしてめちゃめちゃに当たってきたらしい。


そのせいで、運転席のパパと助手席のママは大怪我をした。後に息を引き取ったそうだ。


後ろにのっていたあたしも、頭を強打し怪我まみれで重態だったとか。


「…そのショックで、一部記憶が無くなってるって……」


あたしは何も知らなかった。

覚えていなかった。


知らないうちに体がカタカタと震えていた。

「し…っ…知らない、そんなの…!知らない…っ」

涼さんは何も言わずに泣きながらあたしを抱き締めた。